みちのく観楓会紀行
***目次***
1.前口上
2.夜行寝台列車
3.もう一人の同行者
4.二つ森
5.はちもり観光市
6.イカの一夜干し
7.十三湖
8.竜飛岬
9.野の庵
10.八甲田山
11.酸ヶ湯
12.奥入瀬
13.十和田湖
14.打ち上げ ―― 天竜食堂
※ドライブマップ
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「観楓会」なる言葉は、北海道に馴染みがなければ知らないのがふつうであろう。カンプウカイと読み、本来は紅葉狩りを意味していたらしい。しかしかなり久しい以前から、宴会を第一目的とし、秋に一泊で行われるような会はもっぱら観楓会と呼ばれる。
旅立ちの10月6日は、あいにくなことに大型台風が太平洋側を北上し、激しい雨が断続するような天候となった。上野駅に着いてみると、常磐線が運休しているらしく、中央改札口付近のコンコースは混雑し、殺気だった感じさえ漂う。夜行列車の通る、日本海側が比較的平穏であることが救いだ。7時半に待ち合わせのHさんが姿を現した。
7日の朝は、小雨もよいのぐずついた天候だった。定刻7時50分に東能代駅に到着し、一晩世話になった「寝台特急あけぼの」に別れを告げる。この駅で大館在住のSさんが一行に加わった。 | ||||||
連絡している五能線で一駅、能代駅からトヨタレンタも間近で、
8時半には大学の枠に収まらない教授、憂愁を胸に秘めた仮装(?)キャリアウーマン、志半ばの政治家、ただのフーテンの異色四人組を乗せた車は北へ向かって発進していた。ハンドルを握るのは、土地勘のあるSさん、ナビゲーターは旅行プランの立案者でもあるHさん、年寄り二人は後部座席に収まり、無責任な与太を飛ばしながらドライブを楽しむ。 10分ほどで白瀑神社を後にし、北上を続ける。真瀬川にぶつかり国道101号線を離れ、真瀬渓谷に沿って舗装された真瀬林道、更に青秋林道を登る。この林道は青森と秋田を結ぶものとして計画され、白神山地の自然を破壊するものと、猛烈な反対運動の末中止に追い込まれたものだ。ちなみにこれが建設されなかったために世界遺産として認められることになり、林道の終点が世界遺産地域緩衝地帯の始まりとなっている。 |
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道幅は狭く屈曲の多い道だが、整備状態が良い上に通行車両がほとんどないために走りやすい。海抜0メートルに近いところからグングン高度を稼ぎ、終点では標高945メートルに達していた。数台が駐車し、十数名のレインスーツで身支度した登山者(風)がいる。ガイドの案内で二つ森を目指してきたグループらしい。 登山(?)を割愛した分、行動時間に余裕が増える。Kさんの提案で、河口に隣接する八森漁港の「はちもり観光市」を訪ねる。土曜、日曜だけ開催され、地元の鮮魚、水産、青果などの14店が軒を並べる。「観光」を看板にしながら、実際に訪れているのは地元の人ばかりで、秋田弁が飛び交うのを聞いているだけでも楽しい。 |
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Kさんが市場の穂日中央でつみれ汁をめざとくチェック。一杯200円で、どんぶりのような大振りの椀によそってくれる。つみれを一口食べて、淡泊で上品な味わいに、思わず素材を尋ねた。「ホッケ」がその答えであったが、今まで持っていたイメージとは異なり、強い油と癖はまるでない。鮮度の高いものから、良いところだけを使用すれば、このような美味が出現するのか。 北上を続けるうちにSさんが、「ここら辺はイカの一夜干しを焼いたのが旨いです」と教えてくれた。確かに沿道に「一夜干し」の幟がはためくのを再三目にする。朝飯抜きでつみれ汁のみだったので、「次の一夜干しを賞味」で、衆議一決、いくらも走らないうちに駐車場を備えた一夜干し売店があった。 |
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