11月15日は、5時半に目が覚めた。辺りは真っ暗で中天にかかる月が冴え冴えとした光を放っている。隣接するミニ動物園からは、暗闇にもかかわらず、雄鳥の時を告げる声が響いてくる。5時40分になると東の空が茜色に染まり始めたので、ぶらぶらキャンプ場を散歩してみた。 | ||||
場内を半周し、少しばかり小高いところに出ると、阿蘇山中岳が暁の空にシルエットになっているのが見えてきた。
この朝も、鍋の残りに米を少々放り込んで雑炊にする。半時間ほど煮込んで、それらしきものができたところでTを起こした。雑炊の量はさほど多くなかったものの、Tが「あまり食欲がない」と、一椀でで箸を置いてしまう。こちらの食欲も旺盛とは云いがたかったが、食べ物を捨てるのは嫌なので、頑張って全て平らげる。 のんびり撤収作業を終え、7時を廻ったところで発進した。まだ無人の管理事務所で、ゴミ捨て場を探したが見つからない。多分ないのであろうと、そのまま車に積んで行くことにしたが、ますます酷いキャンプ場だと、二人で口を揃えてこき下ろす。
阿蘇まで来たものの、「これを見たい」と云うものもなかった。しかしTが「ともかく来たのだから」と、キャンプ場を出ると、ハンドルを阿蘇パノラマラインへ向けて切った。行き交う車もないが、曲がりくねった上り坂を走ること5分で、パノラマラインにぶつかる。これをさらにのぼれば、阿蘇山ロープウェイなどもあるようだが、営業時間には早過ぎる。 | ||||
阿蘇パノラマライン出会いからの景観。 | ||||
パノラマラインを下り
、国道57号線を熊本目指して戻る。昨日より遙かに混雑しているのは、通勤ラッシュのせいらしい。しかし渋滞と云うほどのことはなく、順調に距離を稼いで、熊本インターチェンジから高速道路(九州道)に乗り入れる。
長崎間近になって小雨がぱらついたものの、市内にはいるまでにあおぞらが戻ってきた。11時にフェリーターミナルに到着し、搭乗手続きを済ませる。乗船開始は12時なので、昼飯を摂ることにした。当初は周辺の飲食店を探すつもりでいたが、見渡せる範囲にはなく、「土地勘のないところでうろうろしていると食いはぐれることになりかねない」とも思われ、安易に妥協してターミナルビル1階の食堂に入る。
12時にフェリーボートが接舷した。古ぼけた船だ。執筆にあたり調査したところ1982年就航で総トン数は1,800トン。乗船後、ともかく後甲板に上がる。 | ||||
船の旅は、視界に海原しかないと、すぐに退屈になる。その点、五島航路は良かった。瀬戸内海ほどではないが、「エーゲ海の島が少ない部分程度」と云ったら褒めすぎだろうか。ともかく4時間強の航海中、デッキを離れることなく過ごした。 | ||||
ターミナルビル一階に、五島市観光協会観光案内所がある。ここでホテルリストとパンフレットその他、観光資料を貰った。ついでにインターネットのアクセスポイントを訊くと、ネットカフェ的なものはなく、市の図書館でなら可能とのことだった。
一休みして早めの(と云っても我々には普通の)夕食に出かける。フロントでお奨めの「夕食がてら一杯やれる店」を二、三軒教えて貰った。 | ||||
左上:お通しと追加で頼んだ刺身。刺身はこのあとも二品ぐらい。右上:鰺すり身の揚げ物。熱々が出てくる。 右下:ひらまさの真子甘煮。右下:並みチラシ寿司。 | ||||
注文はTに任せて、呑むことに専念する。彼が見繕ってくれたのは、刺身、揚げ物でそれぞれ旨い。しかし旨
さとは別の次元で「オヤ?」と感じたのは刺身の歯応えだ。グルメではないし、刺身に詳しくはないが、初めての食感だった。水揚げされてから時間が経っていないために、死後硬直が残っているのだろうか。 翌朝は5時ころ目覚めた。外はまだ真っ暗だが、窓を開けて夜空を見上げれば、雲間から星が瞬いている。多少なりとも日の出風景が期待できそうなので、5時40分を廻ってTと共に宿を出た。 | ||||
港までは5分で辿り着いたものの、どうしようもない方向音痴のせいで、目指す撮影ポイントとはまるで違う方角へ5分ほど歩き、ようやく間違いに気付いた。既に東の空はかなり茜色に染まっている。日の出を思う位置からとるには手遅れだろう。 | ||||
宿から至近の距離にある福江城趾から見物を始める。「幕末の城郭」と云う観点からは貴重な史料らしいが、素人が見る分には、規模的にも小さく、あまり面白くない。築造した五島氏の財政規模を考えればやむを得ないだろうが。 | ||||
左上:アオリイカ(大型)が1,100円。右上:活きの良い大鯖。左下:鰺の干物。右下:特大鰺の干物。 | ||||
旅先でこのような市場を目にすると、無性に買い込んで(調理し)食べてみたくなる。しかし旅館やホテルに泊まっていれば、調理などできるはずもない。それが、今日はオートキャンプを予定しているので、食材を買うことができる。
ほくほくした気分で眺めていった。
徒歩5分の宿へ戻り、車に積んであるクーラーボックスに鰺を仕舞った。部屋でトイレを使ったりして一休みすると、間もなく約束の10時になる。 | ||||
すぐそばの市立図書館へ立ち寄り、無料インターネットアクセスサービスを利用してメールをチェックしてから、エレナでキャンプ用の食材や、ビール、クーラーボックス冷却用氷などを仕入れる。鮮魚売り場でアオリイカが多少小振りながらも402円の値札が付いているのを見て、堪らず買い込む。較べてみると、公設市場は多少高めの価格設定にも思えてきた。
買い物を終えて、島内一周のドライブに出発する(地図参照)。国道384号線を西北西に進むと、すぐに市街地を外れ、見通しが良く交通量の少ない道を気持ち良く走った。たまに行き交う車の運転マナーを見ても鷹揚な感じを受ける。次第に島の「空気」に馴染
み、それと共に、良いところへ来たとの思いが徐々に実感されてゆく。 | ||||
高浜海水浴場。小さな岬の向こうに噸泊海水浴場。 | ||||
観光案内によれば、「日本の渚100選・日本の海水浴場88選に選定」と紹介されているが、むべなるかなと思わせる景観だ。白砂の浜と澄み切った海が素晴らしいし、両側に張り出した岬により、東シナ海からの波浪も遮られ、さざ波が穏やかに打ち寄せるだけだ。 |
眺望の良い場所を求めながら周囲をぶらぶら歩き、20枚ほど撮影してから浜辺へ向かった。駐車場やそれに隣接した、シャワーや飲食を提供する建物もあるが、シーズンオフのためひとけはない。砂浜を50メートルほど歩いて、波打ち際まで行ってみた。肌理の細かい白砂は綺麗だし、遠浅の海は泳ぎを目的とする人にはともかく、子供達が遊ぶには絶好だろう。夏の賑わいはさぞかしと思うが、今浜辺にいるのは我々二人だけだ。 |
期待していなかった故に儲けものをしたような気分で食堂へはいる。先客は家族連れ風の四名だけで、メニュー札に「お酒」があることも確認し、一安心。冷や酒と餃子を注文した。
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島周回を再開する。荒川聚落から40分ほどで、島の西端、大瀬崎に到達した。木製で地上高1メートルほどの展望台に登ると、島南部に連なる断崖、オゴ瀬、赤瀬などが見える。 |
岬から40分ほど走ったところで、村祭りの御輿巡行に出会った。中々に立派な御輿で、担ぎ手も全員法被をまとい、そればかりか
衣冠束帯姿で、笏を持つ三人に、巫女までが付き従う、気合いの入った行列だった。 |
キャンプ利用者は、他に一人いるだけで、空いている場所ならばどこを使用しても良く、荷物を下ろすためならば車もそこまで乗り入れ可能、しかし最終的には駐車場へ置くよう指示された。 |