雪見酒紀行2015
***目次***
1.北軽井沢
2.八戸へ
3.天竜食堂
4.青森の早昼酒
5.函館へ
6.函館 ひかりの屋台 大門横丁
7.弘前 野の庵
8.弘前 とり畔
9.鶴岡の昼飯
10.鶴岡の居酒屋
11.村上の昼酒
12.米沢 北都匠
13.山形 土佐
14.フィナーレ 仙台居酒屋徘徊
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1.北軽井沢 | |||||
北軽井沢は文字通り軽井沢の北に有り、標高が高いこともあって積雪量は30センチほどだった。そんなことで雪見酒がスタートする。急ぐ旅でもないので、二泊してゆっくり久闊を叙する。里親のYさん、Nさんともかれこれ30年の付き合いだが、顔を合わせるのは久しぶりなので話題には事欠かなかった。 |
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2.八戸へ | |||||
はやては自由席がなく、指定席は嫌いなのだが、自由席に固執すると、盛岡までやまびこで行き、そこから先ははやてに立席特急券で行くことになる。これでは気分的に落ち着かないし、大宮と盛岡での待ち時間が長いこともあり、八戸到着ははやぶさの直行より2時間も遅くなってしまう。 以上のようなわけで今回は、「忍び難きを忍び」指定券を購入した。大宮から乗車したはやての8号車はほぼ満席状態で、もちろん指定席だから坐れないことはないが、車内での昼酒には不向きだった。 しかしだからといって雪見酒紀行で昼酒を抜かすことはできない。二人席の通路側に坐るオバサンには申し訳なかったが、持参の焼酎水割りをマイカップで、これも持参のチーズやミックスナッツをツマミに飲み始めた。1時間ほどで予定量を飲み終わる。 |
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3.天竜食堂 | |||||
半時間ほど気持ち良く眠り、目覚めた後はメールチェックなどで時間を潰す。5時25分に天竜食堂へ行くとOさんは先着し、小上がりで待っていた。 天竜食堂を初めて利用したのは、2006年の雪見酒紀行で、父の従兄弟で八戸在住の九十半ばを過ぎてなお矍鑠としていた故M老人を訪ねたときだった。宿の隣にあり、店構えが好みだったので安直に暖簾をくぐったが期待を大幅に上回る店だった。食堂というより飯屋がぴったりで、昼はともかく夜ともなれば酒が中心となるようだ。 まもなくO夫人も登場し二人はビール、私は焼酎の水割りで宴開始の乾杯だ。料理は各自がこれと思うものを注文し、皆でシェアすることにした。こんな風にできるのが嬉しい。 一年間に約80日ほど旅するが、基本的にいつも一人だ。これはなんと云っても気楽で私の好みにも合うが、不満あるいは残念に思うことが二つある。一つは荷物の管理で、一時預かりなど使用しなければ、常に自分で管理するしかない。「ちょっとトイレへ。」と思っても、総ての荷物を持って、それがさらに個室だったりすると往生することになる。もう一つは食事で、特にヨーロッパのように一皿の量が多いと、何種類か試したいと思っても諦めるしかない。 ということでまず注文したのは此処のオヤジが推奨した刺身の盛り合わせ、焼き魚のお奨めを訊いて塩サバ、これに馬肉煮込みなどと、私が前から気に入っているヌルヌル五点和えも。 この、「ヌルヌル五点和え」は天竜食堂が売り物にしている一つで、健康に何となく良さそうなヌルヌル食品を現在は六点(めかぶ、もずく、納豆、オクラ、山芋、なめこ)和えたものだ。箸に纏わり付いたり、糸を引いて食べにくいのが難点だけれど、食感と味わいは私の好みに合っている。 旧友との再会に話が弾むと共に、飲みかつ食べる方も三者揃って快調だ。馬肉煮込みはいわゆる「煮込み」とは異なり、注文を受けた分だけ仕込み、鉄鍋で供されて一応火が通っているがカセットコンロの上でさらに煮込んで食する。一見したところ馬肉鍋でも良さそうだが、煮込みだと単価が800円で、馬肉鍋になると2千円に跳ね上がる。機会があれば試すのも良いだろう。 赤カブの漬け物やぶりの刺身などを追加し、お開きとなったのは8時頃だっただろうか。かなり酩酊していたし、この辺りは曖昧だ。しかし、「遠来の客だから。」ということで、勘定を支払うことなくOさんの御馳走になってしまった。有り難いことではあるが、申し訳ない気持も強く感じる次第だった。 |
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4.青森の早昼酒 | |||||
翌朝は薄曇りだが風もない穏やかな朝を迎えた。 この日の目的地は函館で、これは簡単に決めたことだが、準備段階で移動方法はあれこれ検討した。 函館まで直行すると3時間弱で着いてしまう。宿の最終チェックアウト時刻が10時で、チェックインできるのは早くて3時なので2時間ほど潰さなければならない。函館で見物したいようなところがあれば良いが、これと云ってないし、八戸に関してはさらにない。 青森まで在来線でのんびり行く手もあるが、八戸から青森まで特急を利用しないにもかかわらず乗車料金が千円以上高くなるのが業腹だ。なぜこのような逆転現象が起きるかというと下記のような理由による。 1.JRは距離が長くなるとキロあたりの単価が大幅に安くなり、軽井沢から函館のキロ単価は約13円だ、八戸から青森は第三セクターの「青い森鉄道」でキロ単価は約24円 2.JR区間は大人の休日倶楽部(65歳以上を対象とした倶楽部で運賃が3割引になる)割引が適用されるが、青い森鉄道はなし 3.東北新幹線から函館への特急に乗り継ぐと特急料金が半額になる |
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そんなことで八戸を10時32分のはやぶさ3号から新青森で乗り換えて、青森着が11時14分。青森発午後1時のスーパー白鳥11号を利用すれば函館着が2時58分でほぼチェックイン開始時刻だ。ちなみにこのような利用では、「乗り継ぎ割引」に該当しないのかもしれないが、そこは勘弁して貰う。 前振りが長くなってしまったが、予定通り青森へ着き、駅から3分のおさないへ直行する。訪れるのは年に1~2回だけれど、回数を重ねているので女将とは顔馴染みだ。お茶を運んできた彼女に、「焼酎の水割りは飲めますか?」と訊いた。 焼酎の水割りはお品書きにないものだが、昨年の5月に来たときにたまたま手持ちの焼酎が有り、「持ち込み料を払うから. . . .」と頼んだところ、「二階(居酒屋おさない。夜だけ営業)から持ってくれば良いから、焼酎をお出しできます。」と云うことになったのだ。しかしその後半年以上たっていることだし、当たり前のこととして注文するのも気が引けての質問だった。笑顔で引き受けてくれる。 飲み物が決まったところで、昼飯替わりのカスベ(エイ)の煮付、天然ひらめ刺身、ほたて貝焼きみそを注文する。 時分どきになり、観光客とおぼしき家族連れやカップルが訪れたものの、これまでの印象からすると随分空いている。混み合ってきたら相席でも良いと声を掛けるつもりだったので、いささか拍子抜けした。考えてみれば日曜日だったので、日頃は昼飯に来る常連客が来なかったせいだろう。 水割りを三杯飲み干し、料理も総て食べ終えたところで、12時半になっていた。1時の列車に乗るのにちょうどおあつらえだ。 |
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5.函館へ | |||||
本州を走っている間は、海岸線に近いところを行きながらもほとんど海は見えなかった。蟹田を過ぎて幾つかトンネルを通過し、1時45分に青函トンネルに入る。ここから先は暗闇の中をひたすら走るだけで全く面白くない。 それを多少なりとも償うかのように、JR北海道は座席背もたれの裏面に、トンネルの断面図や各特急列車の主要ポイント通過時刻などを記載したパネルを貼り付けている。これを見ながら退屈しのぎで約半時間のトンネル通過を終えた。 海峡をトンネルで横断したわけだが、窓から見える景観は本州側と変わりがなく、例えばトンネルを居眠りして通過したならば現在地が北海道とは判らないだろう。木古内を過ぎ、函館湾とその向こうに函館山が見えて初めて北海道にいることをしみじみ感じる。 |
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6.函館 ひかりの屋台 大門横丁 | |||||
函館に着いたのは定時だった。まず緑の窓口へ行き函館から先の乗車券その他を購入する。青森まで海峡線で、そこから奥羽線、羽越線、米坂線、奥羽線(山形線)、仙山線、東北新幹線、上越新幹線、長野新幹線で軽井沢。此処から連続切符で折り返し都区内まで。途中寄る予定の街は弘前、鶴岡、米沢、山形、仙台、北軽井沢だ。 一般的とは云いがたい切符なので発券に時間が掛かることも多く、今購入しておくのが安全だし時間の無駄もない。特急券も函館から青森だけでなく、仙台から軽井沢、軽井沢から大宮も一緒に購入したのはジパング倶楽部の三割引が適用されるためには同時購入が必要な故だ。 |
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この横丁に初めて足を踏み入れたのは2007年のことで、函館で飲むのもこの時が初体験だった。函館も古い街だから、探せば歴史を感じさせるような居酒屋もありそうだが、歴史はなくても癖もなく気楽に飲めるこの横丁が気に入り、年に一度くらいだけれど函館へ来ると此処で飲む。 一軒目は焼き鳥の光味亭で、昼から営業しているので4時半でも入れる。カウンターだけ8席だけの小体な店だから、もう少し遅い時刻だと満員の恐れもある。先客は二人で、どちらもリタイア世代のようだ。中央に座ったじいさんは常連らしく、亭主と共通の知人に関するあれこれを延々と話していた。 焼酎の水割りを頼む。お通しは山かけだった。それほど食欲もなかったので漬け物盛り合わせを頼む。亭主がカウンターに向かい合い、焼き鳥などを焼き、女将が奥の小さな厨房でその他料理を作っている。亭主はこの店を始めるまで、焼き鳥などの食材を卸す会社に勤める、サラリーマンだったと、以前聞いたような気がする。 |
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ヤマタイチでは女将が接客や飲み物作り、亭主は奥の厨房で作業し、息子がカウンター内で板前をとの家族分業システムだ。女将に飲み物を訊かれ焼酎の水割りを所望すると、重ねて銘柄を訊かれた。何でも良いと答えたら、「それではソフトで. . . .」と半ば独りごちるように呟きながら水割りを作ってくれた。お品書きを見ると札幌ソフト(甲類焼酎)らしい。 お品書きを見ると、食事以外で30品目以上あり、それ以外にも壁に貼られた短冊お品書きや本日のお奨めなど、光味亭の比較的素っ気ないお品書きとは対照的だった。眺めれば活き真烏賊刺や活きツブ刺しなど気を惹かれる品もあった。しかし真烏賊一杯は食欲に比して多すぎるような気がしたし、値段も千円とかなりする。結局頼んだのはタチ(真鱈の白子)ポン酢だけだった。 久しぶりに食べたタチポン酢は美味かった。しかしどちらかといえば焼酎より酒、それもほどよく人肌につけた燗酒が合うのかもしれない。 先客はカウンター席中央に坐るオヤジ一人だったが、しばらくして観光客風が一組来店した。女の子二人でテーブル席に着き、遠かったので判然としないがアジア系外国人らしい。女将の英語力は大したこともなさそうだが、外国人の訪れが珍しくないのか、メニューなどはそれなりの用意がされているようだった。 水割り三杯を飲んで、時刻は7時頃になる。光味亭と合わせて、充分飲んだ気分だったので帰ることにしたが、ヤマタイチの向かいに掛かったラーメンたつみの暖簾を見て、久しぶりに食べてみる気になった。糖質制限食には抵触するが、たまには体に悪いこともしてみたい。 |
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7.弘前 野の庵 | |||||
7時ちょっと前に東横インの朝食を軽く摂る。このホテルチェーンでは以前だと7時が朝食開始だったが、最近は6時半のところが増えている。チェーンの主たる客層がビジネスマンや職人なので、早い時間が歓迎されるのだろうか。 8時8分の特急スーパー白鳥で青森へ向かい、乗り換えた普通列車が弘前に着いたのは11時18分だった。駅前の東横インに荷物を預け、カメラバッグだけを持って出かける。 壱番街の喫茶店、壱番館に立ち寄りってセイロン風ミルクティーを飲む。弘前を訪れれば必ず寄りたいところだが、商売気を無くしたのか昼頃には店を閉めてしまうようだ。 壱番館から弘前城址を横切り、西濠に隣接したように建つ野の庵へ。此処とのお付き合いも2000年の7月以来だから14年以上になる。女将の貞子さんが変わらぬ笑顔で迎えてくれた。先客はおらず、店内中央付近の雪景色が良く見える席を選んだ。 早速店内からの眺めを撮影しようと、カメラバックを開いてカメラがないことに気付いた。特急の車内で蟹田付近の海岸風景を撮影後、デイパックの下になったカメラバックへはしまいにくかったから、臨時のつもりでデイパックに収めそのまま忘れていたのだ。 いつも野の庵では女将や亭主との話に熱中し、実際に雪を見ながら雪見酒をできるのは此処ぐらいにもかかわらず、その画像を撮り損なっている。今回こそはと気合いを入れ、店内外の光量差を補うべくデイライトシンクロを利用しようとストロボを仕舞ったカメラバックを持参した。しかし肝心のカメラがないとは何とも間抜けな話だ。 貞子さんが津軽海峡の四合壜を出してくれる。弘前の造り酒屋である六花酒造が作っている米焼酎だ。お通しもすぐに運ばれて、ともかく水割りで飲み始めた。己の間抜けさ故に、多少苦い酒となったような気もするが、美酒佳肴にそれも忘れて気持ち良く酒が進む。 野の庵では何年もお品書きを見たことがない。総ておまかせしておくのが良いと判ったからだ。ということでこの日は、お通し三品、蕎麦掻き、紅ザケといくらの麹漬け、マグロ、烏賊、ホタテの刺身が適当な間隔で供され。締めは幻の津軽蕎麦をモリで。約一時間でこのコースを終えたが、話題は一向に尽きることなく、いつものことだがさらに一時間ほど話し込んでしまった。 2時半になってこれ以上の長居はご迷惑だろうと席を立つ。1時を回ってからは他に客もなかったこともあり、亭主の彰さんは玄関を出て敷地の境にある枝折り戸まで見送りに出てきた。名残を惜しみつつ春陽橋で西濠を渡る。 |
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8.弘前 とり畔 | |||||
タクシーのお陰で5時7分にとり畔へ入ることができた。先客はなくオヤジとアルバイトの青年が一人いるだけだった。とば口に近いカウンター席に坐る。オヤジが奥の方の席を奨めてくれたけれど断る。遠慮ではなく、テレビを見たくないことと、煙害をできるだけ避ける用心だ。 焼酎の水割り氷なしを頼むと、アルバイト君がお通しの枝豆と一緒に、大きめの中ジョッキで給仕してくれた。ツマミに漬け物と鳥わさを注文する。インターネットの食べログでこの店をチェックした時、クチコミで鳥わさが高評価だったとこと思い出したためだ。 漬け物はアルバイト君が用意してくれたのですぐ運ばれてきたが、鳥わさはオヤジが焼き鳥を焼きながらその合間で作るため多少時間が掛かった。まとまった量の焼き鳥を持ち帰る予約が入っていたようだ。 10分ちょっとしてようやく鳥わさが供された。鶏のささみに刻みネギと海苔で上品な味付けだが美味い。ワサビがチューブのものなのは仕方ないというか、変に本わさびなど使って高くなるよりこの方が良い。 ツマミはこのぐらいでもたりそうだけれど、やはりとり畔に来た以上は焼き鳥を賞味したい。ということで砂肝、カシラ、ナンコツをたれで注文する。通はたれではなく塩を好むそうだが、こちらは通じゃないし、塩よりもたれの方が店の工夫が現れるとも思う。 1時間半ほどで水割り三杯とツマミがなくなる。量的には飲み物も食べ物も適量に感じられた。まだ6時半だから、世間一般の酒飲みにすれば宵の口にもならない時刻かもしれない。しかしそんなことだからと余計に飲むような年でもないし、ともかく此処は終わりにして宿の方へ帰ることにした。 外は小糠雨が降っていたが、傘を差すほどでもない。ほろ酔い機嫌で気持ち良く歩く。宿の近辺まで来て時計を見ると、6時47分だ。歩いたせいもあるのか、もう少し飲みたい気分だ。それならばと、昨年の雪見酒紀行で見付けた風変わりな居酒屋おおとろへ足を向ける。 徒歩5分で辿り着いたものの、提灯に明かりは入っていないし店内も暗い。この日がお休みなのかもしれないが、前回に見受けた店内の様子などから推測すると、むしろ不定期営業で、旅人が開店している時行き会えれば幸運だったと思うべき店のようだ。いさぎよく(?)寝ることにする. 9.鶴岡の昼飯 へ |