ドトールの店内に入り,カウンターでブレンドコーヒーのミドルサイズ250円を貰い、席を探す。二階が喫煙、一階禁煙は煙の流れを考えれば適当な棲み分けであろうか。テーブルの配置はゆったりとし、そのうえ客が少なかったので真ん中辺に坐る。
落ち着いて読書できる環境だったのが有り難い。途中でコーヒーをもう一杯貰い、2時間近く読み続ける。12時半を廻って,昼酒に移動することにした。
駅近くのアウガへ寄る。青森市が再開発で作った9階建て商業施設で,地下は、「新鮮市場」を名乗り、元々この場所で営業していた「駅前市場」の商店が多いらしい。O夫人との待ち合わせ場所も此処だが,下見をすると共に、食堂も四軒あるので昼酒するのに良さそうか品定をする。
函館の朝市ほどではないにしても,観光化が進行しているようだ。場内を歩き廻っているのは観光客か,そうでないにしても日常の買い物をしに来たとは見えないような人ばかりだ。食堂の方は,営業時間が朝5時から、早い店は午後3時に閉まることを考えれば,それほど観光化していないのかも知れないが、一見の印象では食指が動かなかった。
結局過去二回利用した駅前食堂おさないに入る。店内には先客が四組、観光客と地元が半々だろうか。冷や酒を頼み、テーブルに置かれた、「今日のおすすめもう1品」カードから、すけそうだら白子とネギの煮つけを追加した。
昼飯だから、もう二品ぐらい追加したいけれど、選択に悩んだ。グルメではないので、日頃は簡単に決めてしまう。しかしこの日は、「晩には地元の海鮮で一杯。」と決めているから,それとの重複は避けたいし、あまり満腹になるようなものも敬遠し、それでもできれば青森らしいものが欲しいとなれば,迷うばかりだった。
挙げ句の果てに、ほたて貝焼みそを注文した。なんといっても青森の名物はリンゴにホタテだし、貝殻に載せて焼いたものならば量は知れているだろう。これが甘い見通しだった。貝殻パターンの金属製鍋は,差し渡し20センチほどもある。そしてそこにたっぷり盛られたホタテは何個分だったのだろうか。出汁とネギを加えて味噌味で煮立て、卵で閉じてから味噌を中心部に小さじ1ほど乗せてある。ボリュームたっぷりの料理だった。
出された時にはいささか怯んだものの、時間をかけて酒と共につまむと,意外に箸が進んだ。酒三本目を追加する時には、日頃の半額になっていたほたてひも刺身を追加する始末だ。
夜を考えると,四杯目は慎むことにして,昼飯を何で締めるか考える。カツ丼が好物なのだけれど,二、三年食べていない。これにしようと思いながら、「カツ丼をわざわざ青森で食せずとも。」などの雑念が湧き、結局は焼干ラーメンを注文してしまった。長いことカツ丼を食べていないのも,実はこんなことの繰り返しなのだが。
焼干ラーメンは素朴に旨く、満足の昼食が完了する。勘定は、酒三本(徳利型ガラス瓶正一合×3)1,950円、ほたて貝焼みそ800円、すけそうだら白子とネギの煮つけ300円、ほたてひも刺身200円、焼干ラーメン650円だった。
3.青森の友
アウガ地下新鮮市場の一角にある休憩広場に、約束の2時半ぴったりにO夫人が現れる。海産物の買い物は,観光化しつつある此処よりも、近所に鄙びた市場があるとのことで,ともかくそこの様子を見に行くことにした。古川市場(青森魚菜センター)だ。
アウガの裏口を出て徒歩1分、規模は一回り小さいようだが、場内の客はこちらの方が多かった。2009年12月から、市場の活性化を目論んで始めた「のっけ丼」が好評だと云うこともあるらしい。確かに魅力的なシステムだと思う。
いかに魅力的でも、今は昼食を終えたばかり、買い物に専念する。まずモズクとナマコ、関東に比べて格安だ。市場の外れにあるホタテ貝専門の工藤ホタテで、特大サイズ3個を600円。これも安い。頼めばその場で殻を外してくれるが、殻付きで持ち帰った方が、何となく鮮度が良さそうに思う。
アウガに引き返し、すけそうだらとその白子を鱈チリ用に調達し、買い物は完了にした。時間に余裕があるので寄り道する。O夫人の提案はねぶたの家
ワ・ラッセか県立美術館を巡ろうと云うものだった。ワ・ラッセは青森ねぶたの保存伝承などを目的として建設されたらしいが、1月5日に開業したばかりと云うこともあり混雑しているらしい。O夫人の、「来る道すがら見たらば、観光バスも停まってましたよ。」の一言で怖じ気をふるう。団体客は嫌いだ。
と云うことで訪ねた県立美術館は、企画展が、「芸術の青森」で、コンセプトが、「青森の自然をキーワードに、“青森発”の表現が一堂に会します。」とのことで、棟方志功やナンシー関の作品やこぎん刺しが展示されていて面白かった。
予想以上に美術館が広く、そして展示内容が充実していたため、最後は5時の閉館予告アナウンスに背中を押されて美術館を出るような次第となった。6時から宴会開始を予定していたから、準備の時間が不足になってしまったが、もとより気の置けない間柄なので、成り行き任せで行く。
Oさん宅でホタテの刺身や、ナマコ、鱈チリの準備を手分けして進めるうちに、Oさんも職場から帰宅。青森の海の幸山の幸がテーブルに並び、乾杯で宴が始まる。それからは
10時半に名残を惜しみつつお開きになるまで、歓談と美味の実に楽しい数時間だった。
4.弘前の知人
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