北海シマエビ紀行(5)

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香荘前から。

10.中山峠

7月5日になり、雲が増えては来たが晴天はまだ続いている。朝食は広間で他の宿泊者と一緒(卓は適当に分けてある)だった。準備されたものから判断すると、昨晩泊まったのは我々も含めて3グループ だけだったようだ。昨日駐車していたのは(地元)ビジター入浴者のものが多かったらしい。
  この日の行程は中山峠経由の札幌まででおよそ140キロしかない。9時にのんびり出発した。国富で国道5号線に乗り入れるが、主要国道なのにそれほど交通量が増えることもなく、のんびりドライブは続く。10時頃に倶知安に着いた。
  一休みしようと、取り敢えず駅前まで行く。喫茶店の存在を期待していたが外れで、駅舎内の観光案内所が教えてくれたベルニナは徒歩3分のところにあった。時分どきは軽食堂、夜はアルコール中心の溜まり場と見受けたが、10時前後ならば落ち着いてコーヒーが飲める。
  暫時休憩後、国道276号線を行くと、羊蹄山が右手に見えてくる。T夫妻は三十年ほど前にニセコのスキー場から眺めた思い出、小生は学生時代測量のアルバイトで沢筋を辿ったことなどを回想しながら眺めつつ進む。

 
 中山峠から羊蹄山。
 

喜茂別を過ぎると次第に山間へ分け入って行くが、地形に険しさはなく、明るく開けた林間の道路は、輝くような新緑があふれて賑わいがある。11時半に中山峠到着。
  時分どきには早いものの、「昼飯は何にするか?」考えつつ峠を下る。札幌といえばほぼ反射的に出てくるのラーメンだが、最近ますます不味い店が増えているような印象がある。勿論旨い店も多いだろうが、まぐれで出会いを期待するのは無理があるし、いっぽう名店などということになると行列ができていたりする。食に執念はなく、行列をしてまで食べたい何かなどはない。
  魚関係は好みだけれど、続き過ぎて食傷気味だし、消去法で残ったのがジンギスカンだった。Tには内緒だが、実のところラーメンは酒のツマミにならないことも大きかった。
  移ろいゆくターゲットがジンギスカンの辺りを漂っているとき、定山渓温泉街の中程で松尾ジンギスカンの看板が目に留まった。このブランドは時流の先端からは取り残されているような感じも受けるが、それがまた懐かしさを呼び起こす。駐車場も空いていて吸い込まれるようにこの店に入った。
  追加も含めて生ラムを四人前、焼き野菜一人前その他キムチなどと冷や酒。12時を過ぎてもそれほど混まず、ゆっくりジンギスカンを楽しむことができた。

11.旅の終わりに

定山渓を下って札幌に接近する。渋滞がないことは歓迎するべきことだが、この時ばかりはホテルへのチェックイン時刻を睨みながら考えてしまった。1時を廻わった頃、札幌郊外の広々した風景の中へ入ってしばし、藻岩山観光自動車道の道標を見付けたときは、まさに「渡りに船」。左へ国道から逸れると、次々現れる道標に導かれて頂上直下の駐車場へ入った。
  札幌に在住していた頃に、頂上まで行った記憶はない。去ってから三十余年で6、7回だろうか。流石に一人で来ることはないが、何人かで街を見下ろし、遠く石狩の浜を眺めて、他愛のない思い出話などするのは時間潰しに良い。この日は特に晴天に恵まれ、おまけに高めの気温が、吹いてくるそよ風をより快く感じさせる。展望に飽きると下の喫茶コーナーでカプチーノを飲み、おもむろにホテルに向かうとほとんど3時になっていた。
  あとはススキノのおでん屋さん「小春」に顔を出せば、この旅もほとんど終わったようなものだ。

茂岩山山頂からのパノラマ(PCによる合成写真)。

 

  あとがき

  この夏も楽しい小旅行を楽しむことができた。 半ば洒落で北海シマエビの解禁日に合わせたのが大当たりで、悪天候から回復した日に北海道に上陸し、好天気はほとんど旅の終わりまで続いたのだった。まさにシマエビ様のお陰、紀行文のタイトルもこれにちなんだ。
  最後に一言、なによりも我が儘なあれこれに付き合ってくれたT夫妻に感謝。そして酒を我慢しながら最初から最後まで一人で運転したTにはお礼のいいようもない。せめて紀行文の最後で深謝!多謝!